2022年11月6日 説教要旨 北尾一郎牧師

いと高き方の御目の中に

ルカによる福音書 6: 20 – 31

説教の動画をYouTubeで視聴できます。

今日は、「全聖徒主日」の礼拝にお招きいただき、誠に光栄に存じます。地上ではお会いできなくなった敬愛するきょうだい方のお顔がありありと目に浮かびます。何ともさびしいかぎりです。

  1. さて、ルカ福音書6章は「平地の説教」と呼ばれる主イエスの説教の一部です。イエスさまは弟子たちと一緒に山から下りて、「平地」にお立ちになった、その時の教えの言葉です。「平地」にいるのは、いつの世も「貧しい人々」であり、「今飢えている人々」「今泣いている人々」です。私たちもそうではありませんか。しかし、イエスさまは、そのような人々のいる「平地に立つキリスト」となられました。
  2. 直木賞作家の西加奈子が昨年出した長編小説『夜が明ける』という作品があります。
    「アキ・マケライネンのことをあいつに教えたのは俺だ。」これが冒頭の文章です。二人の青年の友情と成長の物語です。その生育歴と30代の現実は、貧困と虐待と過重労働の目を覆いたくなるような話が展開します。そして”自業自得” ”自己責任”を声高に叫ぶ保守政党のいわゆる「新自由主義」を著者は鋭く批判します。巻末に近づくと、自分独りで苦しんではいけない、人に頼ってもいい、社会制度を利用してもいいと励ますストーリーが展開しますが、著者の結びの言葉は次のようになっています。「この夜は、本当に明けるのだろうか。苛烈に深く、暗い、この夜は。」
  3. イエスさまは言われます。
    「敵を愛し、人によくしてやり、何も当てにしないで貸しなさい。慈しみ深い者となりなさい。あなたがたの天の父が慈しみ深いように。」
  4. 詩篇56篇9節にはこのような祈りがあります。
    「あなたは私のさすらいの日々を数えてくださいました。私の涙をあなたの革袋に蓄えてください。」
  5. 私事ですが、私は”おじいちゃん子”でした。祖父の人生は激動の時代の中で、貧しく、平凡な人生でした。しかし日蓮宗の熱心な信者でした。日蓮上人が死後も保証してくださるという経文もありました。
  6. 五木寛之という作家の談話(文藝春秋十月特別号)の中に「死への物語」という言葉が出ています。浄土宗の極楽浄土への物語が列として挙げられています。
  7. 日蓮宗であれ、浄土宗であれ、等しく神によって創造された人類です。すべての人は「いと高き方」の御目の中にあります。天の父の慈しみの眼差しの中にいます。
  8. いずれにしても、永遠の救いの根拠は、慈しみ深い天の父の御心の中にしかありません。恵みの御心です。キリストの十字架の血が、この神の愛の保証です。
    あなたを慰め、救いこの恵みがあなたにありますように。アーメン